地獄の曲り角是一部片,さくらホテルのボーイ牧は殺人事件のあった部屋で「三分の一の鍵」と書かれた紙片と鍵の一部をひろった。翌日の朝刊で、彼は昨夜の殺人はある公団の収賄事件にまつわるもので、殺されたのは出所直後の某省課長補佐であり、共犯の課長松永はなお服役しており、一億五千万円の金が行方不明になっているのを知った。思わぬ運命の微笑に彼は狂喜した。ホテルの花屋につとめながら、十万円でその店を買い、彼と暮すことを夢見ている恋人章子の心配をよそに、彼は生活態度をきりかえた。事件のあった隣りの部屋に宿をとった謎の女貴子は、色じかけで彼の鍵を狙ってきた。彼女を手にいれた牧は、ホテルの部屋にテープレコーダーをしかけ、密会するアベックから金をおどしとることをはじめ、やくざの上月組とはり合うようになった。麻薬事件を密告して上月組の組織を自分のものにした牧は、今やいっぱしの顔の利く男となった。しかし、花屋を買いとってもらって経営にあたっていた章子は、そんな牧をいやがった。だが牧の目は覚めなかった。貴子の持っていた鍵を手に入れ、出所した松永の手から殺し屋を使って鍵を奪った牧は、三つを合せて中央郵便局私書函からメモをとり出し、それをコピーしてメモにある三人の人物をホテルに集めた。代議士吉満、局長鈴木、某会社専務宮岡の三人は、牧殺害を計ったが、計画はかつて牧のしかけておいたテープにとられていた。こうして五千円札のぎっしり詰ったパッグを手中におさめた牧は、それを自動車に投げ入れて乗ろうとした時、章子の電話でフロントに呼ばれた。そのスキに貴子が車にとびのり、逃走した。だが車には牧を仇と狙うサブの細工がしてあった。追う牧の目前で貴子の車と札束は炎上した。衣服は破れ、うちのめされた牧は、一人章子の部屋に倒れ込んだ。
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