人形佐七捕物帖 鮮血の乳房是一部片,苫舟に身をひそめて商売をしていた舟鏝頭お冬が、客の武士に乳房を匕首で刺され死んだ。人形佐七は、子分の辰と豆を従え、現場に急ぎ、聞込みを始めた。泉州堺の生れであることくらいしか分らなかったが、死体の守り袋の紐が切られてあり、お冬の手がその紐をしっかりと握っていたことが気にかかった。祭りの日、佐七は女スリを追っていく途中、不気味な男の死体にぶつかった。この男は与兵衛といい、十七年前、泉州堺で回船問屋を...