秘録おんな寺是一部片,江戸根岸の芳照寺に、町娘お春が駈け込んで来た。お春は罪亡ぼしのために尼を志願したと言ったが、本心はこの寺の門跡紫月院を兄の仇と狙ってのことだった。この紫月院は、異常性格者でその乱行は、お春の目をおおわせた。お春の寺入りの式は、壮厳でも厳粛でもなかった。お春は全裸にされ、尼僧全員の見守る中で、阿弥陀仏と夫婦の契りを結ばされる始末だった。その時、寺内は地位をめぐっての派閥争いがあり、尼僧同士の同性愛があり、地獄さながらの罪業のるつぼと化していた。やがて、お春は先輩の尼を同性愛じかけでまるめこみ紫月院に近づいていった。そして、お春は兄の死の顛末を明記した寺日誌をつきつけ、紫月院に挑んだ。が、揉みあううちに二人は燭台を倒し尼寺芳照寺は真赤な炎の中に消失した。それは、宝暦八年一月二十四日のことだった。
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